幕弁ブログ

私は電車で旅をするのが好きで、駅弁はその好きなもののひとつです。その中でも、いろいろな味が少しずつ楽しめる、幕内弁当が一番好きです。そんな幕弁のようなブログを見ていただきたいと思っています。

『中国 - 危うい超大国』レビュー スーザン・シャーク

中国政府共産党は龍を恐れる?

2022年11月末、中国各地で広範囲な群衆抗議運動が展開され、連日TVでも報道されました。A4サイズの白紙を掲げ、反体制の意思を表明するのが流行となったため、一部でこの運動のことを「白色革命」と呼ぶこともありました。

 

政府による極端な「ゼロコロナ政策」への反発から始まった運動でしたが、スローガンの中には「終身制は要らない、皇帝は要らない」「自由は必要、独裁は要らない」「習近平は退陣せよ」「共産党も退陣せよ」と言った、それまでの中国では考えられないような主張もあったのです。

 

私が驚いたのは、警察によって封じ込められるまでのたった5日間の抗議運動だけで、あれ程徹底的に行われていた「ゼロコロナ政策」がいとも簡単に解除されてしまったことでした。政府は、もう封じ込めの必要がなくなったから、と言っていましたが。でもその直前には、火葬場に何百台もの霊柩車が並んでいる、といったニュースが何度も取り上げられていたんですよ。どんだけ民衆が怖いんだよ、とツッコミを入れたくなったくらいです。


 でも、それが中国共産党のまさに本音だ、と著者のシャーク博士はこの分厚い本の中で、様々の事例から論証しています。そして、政府=共産党旧ソ連チェコのように倒されないためには、如何に民衆をコントロールするべきかを建国以来腐心してきたのだと言います。

 

中国の長い歴史の中で、各王朝の衰退期には食えなくなった農民が奔流のようになって、食を求めて中国全土をのたくって、ついには王朝を倒してしまったイメージがあります。これを盲流と言うそうですが、こうなると誰にもその流れを止められません。

 

この「流」は「龍」じゃないかと思います。中国はよく自分のことを龍に例えますが、実は中国のシンボルであるドラゴンはこの盲流のことを指し示しているような気がしています。これを、現政府も恐れているんじゃないでしょうか。

 

中国人の目を持つ米国人

著者スーザン・L・シャーク博士は、ニクソン大統領やキッシンジャー特別補佐官が中国と国交正常化を決意する以前に、中国へ留学してます。それも高校生の時に。勇気あるなぁ。


多分中国語を、母国語のように話せるのでしょう。実際、何分の1かは、中国を母国のように感じていることが、膨大な文章の端々にうかがえます。

中国の脅威感の矛先

ですから、中国が脅威だという本はあまたありますが、自身はアメリカ人でありながら身内のように、政治指導者や軍人、そして共産党の等身大の姿を描き出しています。それが類書と決定的に違う点です。

中国の傲慢さの正体

中国の政治家が高圧的かつ傲慢に見えるのは、実際にそうである場合は少なく、余りにも政権の正統性、維持、運営、生存に関して危機感を持っているため、言い方を変えれば、自信がないためだと言います。自信がない時ほど、高圧的に振る舞わざるを得ないのだと。