『死都日本』レビュー 石黒 耀
火山学者も唸った
筆者は、火山フェチだそうです。超巨大災厄を、実に楽しそうに書いている、と言うのが読み始めて最初の印象です。
誰も見たことのない巨大な自然現象を、迫力と臨場感豊かに描き出すイメージ力は、正直すごいの一言です。火山学者も熱狂した「火山学会公認小説」というのも、それを物語っています。
『破局噴火』と『火災サージ』
『破局噴火』や『火災サージ』という言葉を、この小説で初めて知りました。特に『火災サージ』の恐ろしさは、報道関係者30人以上が瞬時に巻き込まれて亡くなった、雲仙普賢岳の噴火で日本中に知られました。誰も『火災サージ』が、時速200km以上で雪崩落ちてくるなんて知らなかったでしょう。
阿蘇山以上の大カルデラが
九州の各火山、私たちが知っている霧島火山や桜島火山、口永良部島火山はそれぞれが、阿蘇規模の火山の一部だということです。更に、九州の南半分には、大昔に破局噴火した1個の大カルデラが隠れている、と知って驚きました。
もしこれが完全噴火したら、噴火の規模は超弩級で、火山岩は成層圏にまで達し、一部は地球の引力外にまで飛んでいく程だそうです。日本の上には偏西風が西から東へ吹いているので、徐々に日本は火山灰に覆われ、死の国、死の都になってしまうことでしょう。
火山噴火を正確にイメージする
シミュレーション小説としても秀逸で、火砕流が新幹線並みのスピードを持っていることや、火災サージが雲のように見えるのに内部は500度に達するなど、火山噴火の怖さを正確に体験できる必須の一冊だと思います。