幕弁ブログ

私は電車で旅をするのが好きで、駅弁はその好きなもののひとつです。その中でも、いろいろな味が少しずつ楽しめる、幕内弁当が一番好きです。そんな幕弁のようなブログを見ていただきたいと思っています。

秦野にある『奥津国道』美術館に行きました

出張の間が1日空いたので、かねて見に行きたかった秦野の『奥津国道』美術館に行きました。

 

画集や教本はほとんど持っていますが、実物でなければ分からない細かな技法が見れるので、ワクワクして行きました。

 

 

錦糸町から新宿まで総武線で。新宿から秦野まで小田急線で。そして秦野駅前から宮上までバスで。バス下車後美術館までは歩いて10分の、2時間程の行程でした。

 

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奥津国道は、実家が看板描きを家業にしていたので、小さな時からそれを手伝っています。そのためか、中学校から才能を美術教師に認められています。就職したのは、百貨店宣伝部や、転じて映画会社でポスターを手がけてきました。よく知られているのは平凡出版に嘱託として勤めていた時に、「平凡パンチ」(懐かしい)や「アンアン」で表紙を担当して美人画を量産しています。

 

ただ私が奥津国道を(勝手に)師と仰ぐようになったきっかけはそのような美人画ではなく、彼が職業画家を辞めてから始めた風景画を、『水彩画プロの裏ワザ』という水彩技法の本を見た時でした。一般的に水彩画といえば、印象派画家が描いたような自己満足の絵が殆どだったのに比して、奥津国道の絵は日本画の基礎があるためか輪郭がはっきりしていて、しかも細密画のような緻密さもあって完成度が高いと思いました。何よりも職業画の縛りがない分、のびのびと楽しんで描かれている明るさがあって、こんな風景の土地に住んでみたいと思わせる魅力と見ている人に伝えようとする真剣さがありました。

 

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師の絵を間近で見ると、全てが全て定規を引いて描いたような箇所ばかりではなく、線からはみ出して着色している箇所も多いです。しかし、自分が主題とする風景や建物については、じっくり時間をかけて細かく線画を描いていますし、彩色しています。人間の目でも、注視する部分は細かく見ようとしますが、それ以外はぼやっとして色が識別できる程度なので、理にかなっていると思います。そして、全体を不自然でないようにまとめるのが、練達の技なんだと思いました。

 

奥津国道は残念ながら、2016年に亡くなりましたが、彼が著した技法所はかず多くあります。それらを見ながら修練して、細かい部分について知りたくなったら、また『奥津国道』美術館に来ようと思います。