幕弁ブログ

私は電車で旅をするのが好きで、駅弁はその好きなもののひとつです。その中でも、いろいろな味が少しずつ楽しめる、幕内弁当が一番好きです。そんな幕弁のようなブログを見ていただきたいと思っています。

J•P•ホーガン『星を継ぐ者』レビュー 新版が出ました!

 

 

 

今年(2023年)の7月に、ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』の新版が、東京創元社から刊行されました。本書が最初に刊行されたのは1980年のことで、私はまだ20代でした。

 

「月面で宇宙服をまとった死体(後にチャリーと名付けられる)が発見された。地球に運び込まれ、綿密な調査をした結果、チャーリーは生物学的に現代の人間とほとんど変わらぬが、五万年前以上に死んでいたのだ。これは、人類初の宇宙人との遭遇なのか?」

 

ハードSFが大好きで、天体物理も大好きな私は、この導入部に痺れました。それから数年の間に、4、5回は読み返した記憶があります。

 

国連宇宙軍は、さまざまな分野の学者を集め、この前人未踏の謎に挑みます。その中に、原子物理学者のヴィクター・ハントがいました。そして、彼を調査研究の調整役に抜擢するのでした。

 

彼は緻密な頭脳の持ち主で、他の研究者の推論をひとつひとつ緻密に検証し、取捨選択しながらある一つの壮大な仮説を導き出して行きます。この検証の過程が秀逸で、優れたミステリー作品の謎解きを読んでいるようで、知的興奮を抑えきれませんでした。

 

火星と木星の間に『アステロイドベルト』と言う、小惑星帯があることは昔から知られていました。そしてその小惑星帯は1個の惑星が破壊された名残ではないのか、と言う説があることもよく知られていました。

 

五万年前以上に死んだ宇宙人(人類?)と、この仮説惑星は繋がっているのか?実は、この検証は更に壮大な事態に繋がり、その後のシリーズ4冊へと引き継がれていきます。

 

どこまで想像力を飛躍させて行くんや!そしてそれが単に作家の妄想に止まらず、ひとつひとつの想像に科学的な血肉を与えているところが、J•P•ホーガンの他のSF作家との大きな違いだと思いました。まるで科学論文誌「サイエンス」を読んでいるような。

 

今冬には、シリーズ第5弾『ミネルヴァへの航海』(仮題)の刊行も予定されている。待ちきれません。