NHK 海外ドラマ 『DOC 明日へのカルテ』レビュー
NHK総合の海外ドラマ枠(毎週日曜日23時台)で放送された初のイタリアの医療ドラマ、『DOC 明日へのカルテ』をやっと見終わりました。
家内がうつ病で昨年1年間入院しており、退院後も通院を続けているので医療ドラマに対して忌避感があって、彼女がいる時は絶対見せてくれませんでした。
仕方なく16話を全部ビデオに撮って、家内がいない時にチョビチョビ見てたらえらく時間がかかってしまいました。
TVではシーズン1として、2022年10月9日から2023年2月19日まで、放送されました。シーズン2も2023年9月17日から放送予定なので、すごく楽しみです。
『DOC』は、イタリアで過去13年間に放送されたテレビシリーズの中で、最高の視聴数を獲得したそうです。
イタリアだけでなく、ポルトガルやスペインでも若い人を中心に支持を得ており、ポルトガルでプライムタイム平均視聴率を89%(!)上回り、スペインでは106%( ‼︎ )上回った、ということです。熱狂具合が伝わってきますね。
あらすじ〜Wikipediaより〜
『ミラノにあるアンブロジアーノ総合病院の内科医長アンドレア・ファンティは、類稀なる観察力で患者に対し的確な診断を下す名医です。
しかし、その卓越した手腕が自信過剰で傲慢な態度に表れ、「私は医者で、あなたは患者」と言うのが口癖になっています。その上、患者を番号でしか呼びません。
ですが、その才能は皆の認めるところで、彼の医療チームは医師としてのアンドレアを信頼し、同僚の女医ジュリア・ジョルダーノとは愛し合っています。一方で、その高圧的な言動により同僚や患者との間に摩擦が生じることもしばしばでした。
ある日、この病院で治療中に死亡した少年の父親が、アンドレアの医療ミスによって息子が殺されたと信じ込み、帰宅しようとしていたアンドレアを待ち伏せ拳銃で襲います。
弾はアンドレアの頭部の左側に当たり、集中治療室に運ばれました。一命をとりとめたものの、脳の一部である前頭前野を損傷したため、彼は過去12年間の記憶を失ってしまいます。
権威ある医長の座を失い、自分の勤務していた病棟の患者となったアンドレアは、同僚たちのことを思い出せず、病院長で元妻のアニェーゼ・ティベリと離婚したことも覚えていません。
しかし、アニェーゼと二人の子供に恵まれ、幸せな家庭生活を送っていた記憶だけは鮮明に残っていました。
2008年で記憶が止まっているアンドレアは、その間に進化した科学技術を理解できず、スマートフォンやタブレット端末の使い方も全く分かりません。
そして、記憶の抜け落ちたアンドレアは、未だアニェーゼのことを愛し続けており、彼女を取り戻すため様々な障害に立ち向かうことになります。』
①主人公アンドレア・ファンティは、言わば12年前からタイムリープしてきた人間です。
彼の中では、離婚した妻と愛し合っており、病気で幼くして死なせてしまった長男も生きています。そして今は20歳になる長女も、お父さんっ子の可愛い子供のままです。何ひとつ欠けたところがない、幸せな家庭が彼にとっての現実なのです。
②逆行性健忘症のため、医師としての行為は止められています。当然、内科医長の地位は失われ、「治療のために」ベテラン医師や研修医の後ろでオブザーバー的な雑用を許されているのみです。
しかし、内科医長として得た知見や経験は失われておらず、様々なタイプの医師の後ろから見ていることで却って担当医の見逃した点もよく見えます。
その上、患者を番号で呼ぶような傲岸さがなくなった(若い)彼は、患者一人ひとりの抱える問題に寄り添い、自分自身の至らない点も省みることができるようになり、病気の真実により深く鋭くかつ柔軟に迫ります。
③彼が銃で撃たれる原因となった、死亡した少年へ投与した薬が不適切だったことが判明しますが、実はこれは親友の副医長が処方したものでした。
カルテにはその時の彼のサインがありますが、彼はそれを隠蔽して医長になります。アンドレア・ファンティはそのため、自分の責任だと煩悶します。彼は真相に気づくことが出来るのか?
このように、『DOC』はファンタジーの要素、ミステリーの要素、サスペンスの要素を巧みに織り交ぜて進行するドラマです。
心地よい緊張感が中弛みすることなく、かと言ってその回の最後には温かい気持ちで見終わることができる安心感もあり、脚本がよく練られた優れたドラマです。
日本ではシーズン2もこれからですが、イタリアでは既にシーズン3も放映されているとのことです。シーズン2の視聴率次第ですが、当分『DOC』で楽しめそうです。